研究の概要
カムルチーは魚食性の外来魚で、北海道では石狩川水系、天塩川水系で生息が確認されており、分布が広がった場合、北海道在来の淡水域生態系へ大きな影響を与える恐れがあった。しかし北海道のカムルチーについては、ほとんど調査研究が進んでいなかった。
また、札幌周辺において、カムルチーが淡水の水辺に生息する小型魚類に非常に大きな影響を与えているのではないかという事例を観察していた。
このような背景からカムルチー研究会は、道央圏においてカムルチーの生息に関する基本情報を収集し、カムルチーが北海道の淡水生態系へ与える影響を予測することを目的として活動を行った。
調査は平成20年5月〜10月に実施され、平成21年3月に報告書が発表された。
本研究は、財団法人北海道野生生物基金の助成を得て実施された。
なお、カムルチー研究会は報告書発表後、解散した。
詳しくは報告書を御覧ください。
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調査結果
産卵時期について
茨戸川では6月下旬より産卵が始まり、東屯田川遊水池では、7月中旬より産卵が始まることを確認した。また、8月上旬には古巣しか確認されなかったことから、7月中が主産卵期であると考えられた。
造巣環境について
確認した巣は、全て抽水状態にある植物群落内に作られていた。また、巣が作られていた抽水植物群落は、マコモ・ミクリ群落に限られていた。巣内の水深は多様で、最も浅い箇所で22cm、最も深い箇所で70cm程であった。
巣内や周辺の流速は全くなく、流速のある河川では巣は確認されなかった。造巣日数については、不明であった。
浮き巣について
巣材は周辺植生と同様で、マコモ群落であればマコモ、ミクリ群落であればミクリを用いていた。巣内には2個ほどの浮き巣が見られることが多い。浮き巣の巣材は親魚によりかみ切られた後に浮かべられている。切り口が独特でカムルチーの巣の判断根拠となった。
仔魚について
仔魚はオタマジャクシに似ており、極めて特徴的。産卵後、1-2日程度で孵化すると予測される。孵化した直後、浮き巣内に群れて留まるが、1週間程度でいなくなると考えられた。
成魚について
胃内容物調査では、スジエビを多く捕食している個体を確認した。魚類も捕食していると思われるが、どのような魚類を捕食しているかは不明であった。
顕微鏡により鱗の年輪形成を調べた結果、明瞭な冬期帯が見られ、年齢の算出が可能であると判断した。成熟した♀の最も若い個体で3才、最も年齢の多い個体で7才であった。このことから、少なくとも3年目には成熟し、その後、長い期間、産卵活動を行っていることが示唆された。
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